令和5年度水道イノベーション賞【特別賞】を受賞しました

更新日:2023年11月14日

表彰状を受領する場面

表彰状授与

全国会議入り口看板

全国会議会場

取り組み内容のプレゼンテーション

取組内容の発表

今年度、本町の水道事業の取り組みが、「水道イノベーション賞【特別賞】」として表彰されました。

平成28年度から事業実施してきた田島第1水源地の更新が「木材パネル(NLT)を活用した木質建屋による施設更新-経営持続、森林再生、カーボンニュートラルに貢献する水道施設整備-」として、日本水道協会会長表彰水道イノベーション賞特別賞を受賞しました。

この賞は、日本水道協会に加盟する正会員の中から、さまざまな工夫を持って課題の克服に取り組んでいる会員を表彰するものです。今回の受賞は、平成30年度の『広大な山間地域の町村合併に対応したIoT技術「クラウドシステム」利用の遠隔監視・管理への変更』に続き2度目となります。

受賞内容

取組名

木材パネル(NLT)を活用した木質建屋による施設更新
-経営持続、森林再生、カーボンニュートラルに貢献する水道施設整備-

受賞理由

本取組は、水道事業の持続、地元森林資源の活用、環境負荷軽減といった課題に取り組み、老朽化した水道施設の更新を実施したものである。

地域産業の林業を活かした木造建築工法を導入することで、費用の低減化や工期短縮による省人化等を実現し、財政負担と慢性的な人手不足を同時に軽減したほか、耐食性の向上や森林サイクルの好循環に寄与するなどのメリットに加え、林業の担い手づくりや地域経済の活性化にも貢献している。

また、コンクリート構造物が一般的な水道施設に木材パネルを利用した新規性の高い取組であるとともに、カーボンニュートラルの実現や脱炭素化に繋がるモデルであり、大いに評価できる。

抱えていた課題

南会津町は東北有数の豪雪地域に位置し面積の約91%を森林が占め、その山間部に26か所の浄水施設が点在する。水道事業は人口と水需要の減少で料金収入は減少し、施設老朽化で更新需要が増加している。この現状で町は単純な現状維持型の更新ではなく、自然流下の有効活用や相互連絡管整備を行い給水区域の再編、施設再構築や統廃合を、山間地形の特性を活かし創意工夫を図りながらの施設更新が求められる。

一般的に水道施設は構造物の強度を要するため、躯体にコンクリート造が望まれ整備されてきた。当町でも過去建設されたコンクリート造構造物の劣化が進む一方、改築費が高く更新が滞り、積雪寒冷地特有の凍害の影響も深刻となっていた。そうした中、当町の基幹産業である林業は、国産材需要の減少や木材価格の低迷から従事者は減り、森林の荒廃が起きている。林業、製材業、関連建設業では、そうした状況を打開すべく地域の技術を生かし、強度が高く環境に配慮した木造建築工法が開発されている。

水道事業の持続、森林再生、そして水道事業固有の課題である環境負荷軽減(水源環境の保全、脱炭素化)を同時に取り組む課題への挑戦を模索した。

取組概要

老朽化したポンプ施設の建屋に、地域産材を用いた耐久性を伴う木質建屋で更新を行った。この取組みを行った田島第1水源地は1日最大浄水量1,962m3(浅井戸、消毒のみ)で当町最大の浄水施設である。配水エリアには地域唯一の基幹病院も含まれ、更新計画は現状を改善し機能維持・回復できる取組みを行った。具体策を既存と更新に分け施設種と内容を下記に示す。当該地の渇水対策と近隣配水系の停滞水対策を兼ねる連絡管を整備し、双方の浄水混合を目的に受水槽を設けた。その後にポンプで配水池に送水する。気候変動による水源バックアップ策、余剰水の水質安定策、取水ポンプの効率策を現状に追加する計画とした。このため、更新建屋を2棟必要とする計画となった。
 

【既存施設】 【更新施設】
コンクリートブロック造建屋 1棟
(電気・ポンプ・滅菌室)
取水兼送水ポンプ 2台
木質建屋(ポンプ室) 1棟
木質建屋(電気・薬品室) 1棟
送水ポンプ 2台
取水ポンプ 2台
受水槽(SUS製60m3) 1槽
連絡管HPPEφ75mm 735m


取組のきっかけとなった既存建屋は築50年を間近に、凍結融解により建屋外部の壁、屋根、雨水排水管に表面剥離や亀裂が生じ、水の浸入による劣化が著しかった。内部は水道施設特有の使用環境下で生じる結露、酸性ガス等からコンクリート中性化による劣化が見られた。このことから更新建屋を従来型のコンクリート造とした場合、同様の経年化を懸念した。さらに、建屋2棟による財政負担の増大、過疎・豪雪の地域事情から建設業従事者の減少や適正なコンクリート施工時期及び品質確保も懸念された。これらを払拭する施設建屋の新たなイノベーションを求め、当町の基幹産業である林業の再生、水道事業に恩恵を与える森林再生につながるNLT(Nail Laminated Timber)の木材パネル建材を活用し、持続可能な水道事業につながる取組を行った。

取組による効果

当該取組みは、平成28年の建設用地買収から令和4年の運用開始に至る7年間、事業費約2.5億円の更新事業である。運用開始50年を目前に年度投資限度額と照合し、他の事業に影響を及ぼさない範囲で実施された。取組みによる効果を以下に列挙する。

1.財政負担
建屋規模6.4m×3.7mを、コンクリート造とNLTで比較した場合、前者は43万円/m2で後者は24万円/m2の結果が設計段階で示された。当該施設規模で約45%の経済的削減効果を得ることができた。工夫点は基礎コンクリートの品質確保と財政支出の平準化を図るため、前年度にコンクリート基礎下部を、次年度に木質上部に分割し2棟を4年間で完成させた。

2.耐食性
既存建屋は凍害、結露と酸性物質による経年劣化が著しい。木材は凍害の心配はなく、湿度の高い時期に湿気を吸収し、乾燥期に湿気を放出する特徴から結露発生を抑制、弱酸性の特性から酸性物質に耐食性を発揮する。工夫点は基礎コンクリートと木材パネル間に通気パッキンを施し室内空気サイクルを向上させている。このことで換気扇も通常の給排気2か所から排気1か所に減らしている。

3.施工管理
工場でプレキャスト化した建材は、気象条件の影響なく品質管理でき積雪寒冷期でも組立加工が可能である。工程管理の影響も現場作業期間が短縮できることで慢性的な人手不足解消に繋がる。工夫点は11月中旬からの積雪寒冷期を回避するため、分割した基礎コンクリート工事を早期発注し品質確保を図った。

4.素材自由度
4年間の分割発注で、ポンプ建屋壁面への配管貫通工事があった。従来型コンクリート造は、貫通部に補強配筋し同時に鞘管を設ける等が一般的である。今回はポンプ据付施工時の壁面削孔から配管した。建築工事中の同時施工を回避でき素材自由度の高さを実感できた。工夫点はパネル制作時に削孔箇所の木ねじを除き、その前後に補強ねじを施し性能確保した。素材自由度は電気配線等を壁面に釘打ちでき、将来の増改築への対応し易さに期待が持てる。

5.健全な水循環
木材利用で間伐等森林整備が促進し、森林機能の健全化から浄水機能の環境負荷軽減効果を期待する。森林伐採から植樹そして伐採を繰り返す森林サイクルの好循環は高濁度水、渇水、富栄養化への具体策として示せる。工夫点はNLTの特徴である材木丸太約60%程度の建材転換で消費拡大を促している。

6.脱炭素化
樹木は大気中のCO2を吸収して成長するため貯蔵・固定されカーボンニュートラルの実現に重要な役割を担っている。平成29年度森林白書では住宅一戸当りの木造はコンクリート造に比べ、炭素固定量約3.8倍、製造時CO2排出量約1/4と示され脱炭素化への効果が高い。工夫点は一般的木造住宅よりも材木搬出量が多くCO2排出量が大きくなるNLTだが、その分使用量も多く炭素固定量増大に繋がっている。

PRポイント

[課題解決力・実現難易度(波及効果性(内部))]
長期人口減少社会で増加回復が厳しい中で、中小規模事業体では様々な経営課題を高度な手法を持って解決する職員のマネジメント力向上、同時に社会インフラ構築に欠かせない建設事業従事者の減少への対策が課題となっている。人的及び財政的な制約がある中で新たな経営基盤を構築するためには、新たな手法の実効性を判断し導入を図らなければならない。今回の取組みは水道事業に直接恩恵を与え、日本の恵まれた森林資源に着目した。身近な資源をモノの経営資源に活用させ、財政負担と人的資源の軽減に繋がる解決策として取り入れた。さらに森林再生に水道事業として貢献できる大きな波及効果を示せた。

[展開性・汎用性(波及効果性(外部))]
これまでの水道事業における脱炭素化策は、自然流下の有効活用や太陽光と小水力発電設備等の再生可能エネルギーの活用が促進されてきた。カーボンニュートラル実現に必要な温室効果ガスの吸収源確保の具体的事例は少ない。また実績は大規模事業体が多く占め、中小規模事業体は施設規模からの費用対効果、事業体財政力等から実績は多くない。今回の取組は事業体規模に関係無く、水源林の保全に繋がる健全な水循環への対応は全事業体共通課題で、単純で分かり易く展開性が高い。森林資源が少ない流域下流の事業体でも上流域木材の地産地消、仮に別流域の木材消費でも、健全な森林サイクルに寄与できるため多くの事業体へ汎用性が高い取組みである。

[特にPRしたいポイント]
当町は将来の財政状況を見通し、現有する水道施設を効率的な順序で、再構築等に当該取組を活かし実施していきたい。山積する課題から財政状況が脆弱化する中、過疎と豪雪等の地域性課題と水道施設特有の環境下での耐食性課題へ潤沢な資源の木材を活用できたこと。副次的効果として水道事業が、森林再生に向けたカーボンニュートラルの具体策を示せたことが大きい。森林資源が身近な当町も、近年頻発する気象災害に対し森林機能低下を痛感する。先導的に木材利用を行い、元来強い関係性にある水道事業と林業を結び、双方が抱える課題解決策を具体的に示せたことが今回取組みのPRポイントである。

施設写真(田島第1水源地)

電気・薬品棟

送水ポンプ棟

水道イノベーション賞について

 水道イノベーション賞について詳しくは、(公益社団法人)日本水道協会ホームページをご覧ください。

この記事に関するお問い合わせ先

環境水道課 事業係

〒967-0004
福島県南会津郡南会津町田島字後原甲3531番地1

電話番号:0241-62-6140
ファックス:0241-62-6106

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